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HATTORI食育クラブ 食育通信No.51

対談

100年変わらない、品質と信頼
束子といえば、亀の子束子

株式会社亀の子束子西尾商店
代表取締役社長
西尾智浩

服部栄養専門学校
校長/医学博士
服部幸應

商標登録は1908年、日本三大発明のひとつといわれる「亀の子束子」

服部
僕は、タワシって呼ぶより、「ちょっと亀の子取って」って言っているくらいで、タワシ=亀の子。それに、家庭やプロの現場でも、キッチンや、洗い場になくてはならないもの。汚れを取るのに、スポンジでも布でも取りきれないところで大活躍してくれますからね。他に変わるものがないでしょう?初代はすごい物を発明されましたね。

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西尾
明治40年(1907年)に曾祖父である初代が発明し、翌年に商標登録をしました。まず、靴底の泥落としとして、シュロ製の靴底拭きマットを考案したのですが、靴で踏まれるとシュロの繊維は寝てしまう欠点があったので、発想を転換し、マットの部材を手に持って磨けば、隅々まで磨くことができ、細かい凹凸からも汚れをかき出すこともできると考えついたそうです。

服部
それで、手に持ちやすい形を工夫されたんですね。

西尾
それまでは、わらなどを束ねたもので洗っていたそうですから、隅々まで綺麗に磨くには大変だったのかもしれません。それで、ヒット商品となったわけです。

今も熟練の職人による手作りで、高品質を守り続ける

服部
まさに、当時としては台所革命だったんでしょうね。それにしてもほとんどの工程を今も手作り、というのは驚きですね。機械化は難しいんですか?

西尾
クオリティーを追求すると、機械では無理なんです。指先の感覚で針金の間に繊維が均等になるようにそろえないと、でき上がった時にしっかり目が詰まらないので、綺麗に洗ったり磨いたりできないのはもちろん、耐久性も弱くなります。『亀の子束子』のウリは、職人の高い技術と品質で「他社の3倍もつ」をキャッチコピーにしていましたから。

服部
先ほど工場でタワシ作りを体験させていただきましたが、難しい!あの技術を習得するには10年くらいかかりそうですね。

西尾
そうですね、シンプルな構造ですけど、それだけに手・指の感覚と、手早さ、針金を曲げる時の力加減など、熟練の技術が品質の第一条件。厳しい品質基準を守って、一つでも基準に合わなければ、売り物にはしません。

服部
工場に掲げてある検品項目を拝見しましたよ。20項目くらいありましたね。あまりの細かなチェック、厳しさに感動しました。何でも機械化しようとすればできる時代に、作った人の最初の気持ちを大切にしているなんて、なかなかできることではない。だからこそ感じる温かみですね。昭和というか、日本の古き良き時代の繊細な心遣いを感じることができます。

日本人の民族性や繊細な「心」がこもる文化を伝える道具

西尾
ありがとうございます。「たかが束子、されど束子」というブライドでしょうか。タワシは、外国ではブラシ。世界中にありますが、外国のものは、木やプラスチックに植え付けていたり、持ち手がついてますよね。タワシは直接手に持って使います。「隅から隅まで、自分の手の感覚で磨きあげる」。そういう、掃除というか物を清める時の日本人ならではの心、民族性を表している道具かと。

服部
まったくおっしゃる通りですね。私の学校の生徒にも、その「磨く心」を自身で感じ取ってもらうために亀の子束子を使って洗い方から教えています。料理を作るだけが料理人ではありませんから。食器、鍋やフライパン、包丁、まな板、ザル、流し台......、すべてきれいにして仕事がやっと完成するわけですし、その仕上がりが次につながっていきます。常に衛生を保つのは料理人の基本ですから。

西尾
若い方にも亀の子束子の「心」を伝えてくださってありがとうございます。ナイロン製のブラシなどもありますが、当社の製品のパームやシュロ、サイザル麻はすべて天然素材。口に触れるものを洗うわけですから、安心できる素材にもこだわり続けています。

服部
料理人は食材だけでなく、こういう存在理由がある本物のよさに触れて、それを後世に伝え続けていかなくてはいけませんよね。

西尾
ただ、モダンなキッチンに茶色の古風なタワシはちょっと似合わない、という声もあったんですね。そこで、コラムニストの石黒智子さんと共同開発で、サイザル麻、ホワイトパームを使ったベーグル型のタワシも発売し、好評をいただいております。これを作っているのは、従来の形よりも難しく職人泣かせなのですが.....。

服部
あ、あれは確かに女性ウケがよさそう。確かに、キッチンの表情が変わりますよね。温故知新の名品として、これからまた新たな歴史を刻むのでは......。

西尾
そうありたいですね。タワシは使っていただければ、必ずよさを分かっていただける製品という自負はあります。キッチンを卒業したタワシは、洗面所、お風呂場、最後は玄関やガーデニングの道具洗浄と活躍の場を広げていってほしい。

服部
これは、外国の人にも自慢したい、日本の素晴らしい「磨き」の文化ですね。

西尾
はい。外国に駐在する日本人の口コミで、外国の方からの注文も増えています。オーガニックやマクロビクスの方が多い外国では、野菜を皮付きで食べる場合の土落としに使われる方も多いようです。

服部
そうそう、ゴボウやジャガイモ、ニンジンはタワシで洗うのが一番。天然素材でエコロジカル。キッチンだけではく、家中の水回りをきれいにでき、水切れもよくて衛生的。しかも耐久性がある。文句のつけようがない。この素晴らしい技術というか、文化的製品。「日本人の心」とともに、伝え続けていきましょう!

◆亀の子束子西尾商店

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