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HATTORI食育クラブ 服部幸應コラムNo.32

青を赤にする黄、緑中の赤

透明のティーカップに、青く色づいたハーブティーを注ぎます。
青い水面にレモン果汁を少し落とすと、小さな波紋が連なってすぐ、青いティーは夜明けを迎え、ピンク色に染まります。
夜明けのハーブティーといわれるブルーメロウティー。色素の成分はぶどうやナスなどと同じアントシアニンです。 アントシアニンはアルカリ性で青、酸性で赤を示します。普通に淹れるとブルーメロウティーは青く、 レモンを少し落とせば、淡いピンクに変化するのです。

青や紫、赤色のアントシアニンや、黄色やだいだい色、赤色のカロテノイドなどは植物の色素として自然を彩っており、 私たちの心を楽しませてくれています。
果物の色鮮やかさは、よく芸術や文学にとりいれられるように、私たちの心を刺激する魅力があるようです。 果物自身が、種を広く分散させ繁栄をはかるために、鮮やかな色や芳醇な香り、甘い味で動物を誘っているのかもしれません。

さて、私たちの見ている色とりどりの世界は、必ずしも他者にとって同じ光景ではないようです。
紫外線が見える昆虫は私たちとはまったく違った世界を見ていることでしょう。 同じ哺乳類でも、ヒト以外は色を感じる細胞の種類が少なく、色はそんなに判別されてないのではといわれています。 人間の目は自然や美術品などさまざまな色を楽しんでいますが、実は植物が人間の視覚を発達させたという説があります。

緑と赤を見分けられる種は少なく、人間はその中のひとつです。 人間の祖先といわれる熱帯林に棲む霊長類も見分けることができます。 彼らは緑の葉が生い茂る中に、食べ物を見分ける必要がありました。 動物にとって食べやすい熱帯植物の若い葉は、日光をとりいれやすいというアントシアニンの赤い色をしているそうです。 赤やだいだい、黄色の食べ物は栄養が豊富であったことも一因となり、 我々の祖先は赤色を見る能力を発達させたのではといわれています。 信号機に赤、黄が使われるのは、遠くからの視認性が高いためです。

私たちが色のコントラストを楽しみ、愛してやまないのは、 それぞれの種が生き抜くための術を身につけてきた結果なのでしょう。

ブルーをピンクに変身させるレモンの魔法のように、私たちは料理という術を身につけました。
植物の色は彼らが持つ個性であり、私たちから見ると栄養を表しています。野菜の味や香りをひきたて、 食材ひとつひとつの特長を知って色を保つ料理は、栄養を効率よく取り入れられ、 「おいしそう!」と感じさせて食欲と消化能力をアップさせる、とても合理的なものです。
はるか昔から連綿と続く関係性を思いながら料理をし、いただけたなら、世界をまた違った色で見られるかもしれません。

ミネラルを包むレモン

カルシウムや鉄などのミネラルは、私たちの健康を保つ大切な役割を果たしています。

しかし近年、日本人は骨を強くするカルシウムが不足しがちになっています。その原因として牛乳や大豆製品、 小魚類などカルシウムをふくむ食品を食べなくなっていることが考えられます。
また、カルシウムは「吸収されにくい栄養素」でもあります。 実はカルシウムは、そのままとるだけだと約70%が体から出て行ってしまうのです。

そこで注目したいのがレモンにふくまれるクエン酸。レモンのすっぱさのもとであるクエン酸には、 「キレート作用」があります。
「キレート作用」とは、鉄やカルシウムなどの体に吸収されにくいミネラルを包み込んで、 体に吸収されやすい形に変えるはたらきのことです。

ミネラルをふくむ食材にはレモンを合わせてみてください。 さわやかな香りでいっそうおいしく、暑い時期にも食欲をそそられることでしょう。

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