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HATTORI食育クラブ 服部幸應コラムNo.31

百万年を見て、百年を飲む

良く晴れた日の夜、空を見上げると星が輝いています。
星を眺める時、私たちは「過去の美しい姿」を目にしていることになります。 恒星が燃えて放たれた光は、果てしない道のりを秒速30万kmで進み、長い時間を経て私たちの目に届きます。 遠い星では、百数十万年前の光を見ているのです。

過去を目の当たりにするという点で、湧き出る地下水は星の輝きに通ずるものがあります。

有名な美しい地下水のひとつに、富士山の伏流水があります。
伏流水とは、雨水や雪解け水などが地面にしみこんでゆき、地下水となって、やがて地上に湧き出してくるものです。 ろ過されながらミネラルを適度に取り入れ、良い水質を保っています。
富士山は1日約450万立方メートルもの地下水を保有しているといわれ、 白糸の滝、湧玉池、神田川、忍野八海、そして全国名水100選のひとつ、柿田川などが伏流水として知られています。 柿田川は全長1.2kmの日本で一番短い一級河川で、一挙に海へと続く姿は圧巻です。 富士山が保有する地下水の約2割が柿田川に流れているといい、1日に100万立方メートルの水量を誇り、 そのまま飲用できる水質から、多くの人々においしい水を供給しています。
伏流水は、富士山が活火山であることから生まれています。約1万年前に富士山が噴火して流れ出た溶岩は、 三島溶岩流と呼ばれる地層をつくりました。三島溶岩流は多孔構造になっていて、水を通しやすいものです。 溶岩流の中を雨や雪がゆっくりと通り、湧水となっていくのです。

富士山はろ過機能を持つ、壮大な浄水器であるともいえるかもしれません。 また郷土富士といわれる、北海道の羊蹄山なども美しい伏流水が知られています。 自然の豊かな土地では、より美しい水は得られやすいものではないでしょうか。
土や砂によって水がろ過されるということは、美しい土地なくして美しい水はないといえます。 そして、美しい空気なくして美しい水も土もありません。
清流には動植物が集まり、魚が泳ぎ、小さな虫たちも細やかにつらなり、豊かな生態系がつくられています。 そしてバランスのとれた生態系が清流を守ります。 壮大な年月の織りなす関係性は絶妙であり、私たちももちろんその中にあります。

さて、降り注いで地下水となった雨水は、どのくらいの年月をかけて地上に湧水として戻ってくるのでしょうか。
水にふくまれる放射性物質から、湧水の年代が測定できます。 地層中の水はさまざまな流れ方をするので一概にはいえませんが、 富士山の伏流水では数十日から数十年、100年以上といわれるものもあります。 明治・大正時代に降った雨が長い年月をかけて地下をめぐり、私たちに恩恵を与えていると思うと、 星を見ている時の不思議な思いに近いものを感じませんか。

私たちは、未来にどんな美しい世界を見せることができるでしょうか。 星や水の美しさに癒されながら、伝えられる過去の意味と、現在の生き方を考えるのも一興かもしれません。

体に必要な「水」のはたらき

サッカーの試合などで、選手たちがタイムになるたび、水を飲んでいる姿を見たことがありませんか。 一昔前までは、学生の部活動でさえも「練習中に水は飲むな」などと言われたものですが、それは間違った知識で、 ひどい場合は熱中症などで命にかかわることもあるのです。
私たちの体は、約60?70%が「水」でできています。赤ちゃんにいたっては約80%、お年寄りでは約55%まで減少します。 最も水を必要とするのが血液で、約83%も水分でできています。さらに、腎臓、心臓、肺と続き、 水分がいちばん少ない骨でさえ約22%となっています。
体をつくるほかに、水には以下のはたらきがあります。
?溶媒(胃腸が食べ物を消化したり、栄養素を吸収したり、便として排泄したりするのも、水がいろいろな物質を溶かし、体内に必要なものをとりこみやすくしているため。) ?循環(水分が主に血液として、栄養素や酸素を体内の細胞すべてに運び、反対に細胞から老廃物や二酸化炭素などを取りこんで運んでいる。) ?体温調整(汗をかくなど、体温を一定に保つ機能を果たす。)

生きるためにかかせない水。安心、安全できれいな水を確保すること、 さらには環境をきれいに保ち、良い水を守ることも、とても大切なことなのです。

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