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HATTORI食育クラブ 服部幸應コラムNo.17

日本人の心に咲く花

夢見草、かざし草、あけぼの草、花の雨、花の雲、花冷え、花便り、花疲れ、花巡り、花の宴…。
この美しい言葉たちは何に関するものでしょうか。
青い空に、夜空に、くもり空に映える、たわわに咲きほこる淡いピンクの花、桜です。今年は東では早いおとずれ、西では花待ち焦がれた春の風物詩ですが、一重から八重へとうつろう花は、まだまだ私たちを喜ばせてくれそうです。
平安時代以降の人々にとって花といえば桜というほど身近で、心の奥に咲くような日本人の国民的な花であるといえます。
日本最古の桜の木は樹齢2000年?1800年、つぎに古い木は900年ほどであるといわれています。古くからある桜は日本人にとってどのような存在だったのでしょうか。

桜の語源は諸説あり、「咲く」に大勢をあらわす「ら」をつけて、群れたように咲く花を総称し「サクラ」と呼んでいたものが、ことに桜をさすようになったという説、サキウラ(咲麗)の略、サキハヤ(咲映)、咲いて映えるの略であるという説、古事記に登場する木花ノ佐久夜比売(コノハナノサクヤヒメ)のサクヤよりサクラとなった説など様々あります。

そして語源の説の中でも、日本人の気質をよく表しているものがあります。
「サ」は稲の苗をさすサナエ(早苗)、田植えをする乙女をさすサオトメ(早乙女)のサで、田の神を意味し、「クラ」は神座で、田の神の依代とされることからサクラと呼ばれるようになったということが、民俗学的に桜の語源ではないかといわれています。桜は農耕に深く関わっていたのです。
田の神はふだんは山にいて、山に桜が咲く春の田植えの時期になると人里に下りてくるとされました。暦にも使われ、「山桜が咲いたら種を蒔かにやならぬ」(加賀松任地方)などの言葉が残っています。
桜の咲き具合で稲作の豊凶を占い、山の桜を一枝折って田に飾り穀霊を招じる神事や、奈良時代からは散る花を嫌って鎮花祭が行われました。

奈良時代の歴史書である日本書紀には「草木ことごとく能く言語(ものいう)こと有り」とあります。生きるために自然にそうことは大切なことでした。自然を生き、生活が自然に支配されている古代の日本人の心にはアニミズムがあったといわれています。アニマは精霊といった意味で、アニミズムは自然の万物、草木や石にも神のような意思あるものが宿っているという考えです。
田の神が宿るとされ春を伝えてくれる桜を、人々は畏敬を持って眺めていたことでしょう。

桜は古くから詩歌の題材になっています。平安時代に入るとことさらに桜の歌は多くなります。

「久方の ひかりのどけき 春の日に しづ心無く 花の散るらむ」

古今和歌集の紀友則の歌です。散る桜への不思議を感じていることがわかります。
膨大なエネルギーを使い意思を持って一斉に咲き誇り、いさぎよく散ってゆくさまを、自然は姿を変えうつろうという無常感と重ねているようです。

「花の色は うつりにけりな いたづらに 我が身世にふる ながめせしまに」

美貌で有名な小野小町の歌で、はかない桜に自分自身を投影し、ぼんやりとしている間に美しさを失っていく心情を表しています。日本人は畏敬を持ちながら自然とつらなり生活をしていたので、自然と自分との一体感を感じやすかったのかもしれません。

古人の歌にみられる心情は、飛鳥時代に伝来し、日本人の思想に大きな影響を与えた仏教の考え方に通じるものがあります。桜が日本人を惹きつけるゆえんには、自分の思想や価値観を投影しているという見方もあるのです。

散ってもまた次の年に咲く桜のように、日本人は桜吹雪の名残を前向きに楽しんでいるようです。江戸時代の商人が散った桜の葉を惜しみあみだした桜餅や、隠していた愛らしい八重の花びらを幻想的に開き言祝ぐ桜茶をいただくのもまた一興です。
緑の葉を織り交ぜたうす紅の八重桜は、まだまだ見ごろです。自然や時代のうつろいに思いはせつつ、桜をそぞろ歩きして眺める花しょうようを楽しんでみてはいかがでしょうか。

紅茶の魅力

緑茶、烏龍茶、紅茶の葉は同じ椿科の茶の木から作られているとはご存知でしょうか?
お茶は発酵の具合により分けられ、紅茶は少し変わった方法で作られています。まず広げて乾燥しよく揉んで萎れさせます。その後紅茶を作る上で欠かせない酸化発酵をさせ、乾燥することで、まるで夕焼けを水面に落としたような色と香りの高いお馴染みの紅茶が完成します。

ひとえに紅茶と言っても様々な種類があります。日本でも愛飲されている世界三代銘茶をみてみましょう。
若草の様な印象を受ける春摘み。香り、旨み、渋みのバランスが心地よい夏摘み。飲みやすさの中にも深みのある秋摘みのように採れる時期によりさまざまな特徴が楽しめる紅茶のシャンパンと称されるインドのダージリン。
お茶の発祥の地であり歴史の重みを感じるような奥深い蘭の花のような香りと独特なスモーキーな香り、しっかりとした飲みごたえのある中国のキーマン。
メンソール系の爽快な香りと強い渋みを楽しむことができるスリランカ(セイロン)のウバ。

お茶の種類1つをとっても違いがあります。様々な紅茶を飲み比べて、自分の好みに合った茶葉と飲み方を見つけ、優雅なティータイムを過ごしてみてはいかがでしょうか。

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