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HATTORI食育クラブ 服部幸應コラムNo.36

内なる外の守り

ごはんと味噌汁に、きゅうりやかぶのぬか漬け。ぬか漬けのコリコリとした食感、 野菜の風味とほど良い塩辛さに、ごはんが進みます。最近日本人に人気の漬け物は、 キムチです。長めに切られた白菜キムチでごはんをくるっと巻いて食べると、 トウガラシの辛さとほど良い酸味、熟成のうまみとごはんの甘みが絶妙に協奏します。
ぬか漬け、キムチなどの野菜を発酵させた漬物は乳酸菌がたっぷりと生きており、 野菜のヨーグルトと呼ばれることもあります。

人の腸内にはご存知の通り、膨大な数の細菌が存在しています。 100?200種類の、100兆個とも言われる細菌が生態系をつくっており、腸内フローラと呼ばれています。 乳酸菌などの有用菌と有害菌のバランスはある程度保たれていますが、 食生活など外的要因が影響して変化しています。腸内フローラの働きには、 ビタミンの産生・分解、消化液の代謝、消化吸収の補助、人が分解できない栄養を発酵させ吸収できるようにする、 外来菌の増殖防止、そして免疫機能の刺激などがあります。

胃腸などの消化器系は、実は体を健康に保つ免疫システムにおいて重要な位置を占めています。

内なる外。
口の中から食道、胃腸、肛門までを指してそう呼ぶことがあります。 解剖学的に、胃の中や腸の中は体の中ではなく、体の外になります。 消化管はあらゆる食物、細菌、ウイルス、化学物質にさらされる、体の内側に最も近い外界といえるでしょう。

腸にはせん毛がたくさんあり、広げると小腸だけでテニスコート1面分にもなります。 栄養を効率よく吸収するとともに、特殊な免疫の装置が発達し、 あらゆる物質を自分の内側に受け入れて良いかの検問を行っています。 腸にはパイエル板といわれる免疫組織があり、M細胞と呼ばれる異物を専門的に取り込む細胞が存在しています。 免疫にはマクロファージ、T細胞やB細胞といった免疫担当細胞が活躍しますが、粘膜の下やパイエル板にたくさん集まっています。 消化管には実に全身の80%に近いB細胞が存在しているといわれています。

また、消化管は他者に対して寛容になるシステムをもっています。
たとえば、牛乳をたくさん飲むと、高い濃度でウシのアルブミンというたんぱく質が血液中に入りますが、 じつは、注射をして血液中に入れるとショックを起こすほどの量です。 腸管免疫には、アレルギー反応を起こす抗体を特異的に抑える働きがあるのです。 異物を排除するだけではなく、他者である食物をアレルギー反応を起こさせず自己として 積極的に受け入れるシステムが消化管にはあるようです。

消化管の調子が良ければ免疫機能もアップし、病原菌やウイルスから守り、 アレルギー反応も抑えやすくなるのです。他者を自分の命に変える器官なので、当然といえるかもしれません。

先人が保存性を高めるためにあみ出した味噌、納豆、漬け物など、 伝統食には腸内に良い影響を与える食品がたくさんあります。 伝統を見直し日々いただくことは、私たちの健康につながります。 市販品のぬか漬けなどは、きちんと発酵させていないものもあるので、 ぬか床を作って野菜を漬けたり、きちんとした材料で作られたキムチなどを選んで、 日常的に食べてみてはいかがでしょうか。

また胃腸をいたわる方法は、旬のものが中心のバランス良い食事を、よく噛んで食べることです。 また、体を温めると胃腸の働きも良くなり免疫機能が高まるので、冷やさないようにすることが大事です。
感染症が流行っている時期ですが、内なる外の守りを強め、健康に乗り切りましょう。

キムチのチカラ

あつあつのごはんや鍋、お酒のおともにぴったりなキムチは、 野菜の生産が少ない冬場にも栄養をたっぷりとれる韓国の保存食です。 白菜や大根、塩、トウガラシ、塩辛、にんにく、人参などの野菜をあわせて発酵させたもので、 発酵の主役は乳酸菌。きちんと発酵させて作られたキムチは人の腸内環境に良い影響を与えます。

そしてキムチはビタミンA、B、Cなどの栄養もとれる総合保養食品といえるでしょう。 その中でも、豊富に含まれるビタミンB群は人の体の新陳代謝を促します。 すると体内の老廃物や余分な水分は体外へ排出され、血液の循環が良くなり、 むくみや肌荒れなど肌のトラブルが改善されやすくなります。 また乳酸菌やほどよい酸味は胃腸の働きを良くして消化を促し、便秘予防にもなるので、 日常的に取り入れると健康や美容の助けとなります。

ただ何事もほどほどが一番なので、食べ過ぎにはご注意を。 ぴりりとした辛さとうまみのキムチを、ふだんの食事にちょうど良い量を添えてお召し上がりください。

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