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HATTORI食育クラブ 服部幸應コラムNo.28

オフでオンする味

三角ににぎった、梅干のおむすび。ほんのり甘いごはんを食べ進むと、やわらかい梅肉にゆきあたり、きゅっとするような酸味が口に広がっていきます。
くし型に切った、みずみずしく黄色いレモン。そのまま口に運ぶと粒がつぶれて果汁があふれ、顔中がくしゃっとなるような酸っぱさをじわじわと感じます。

なぜ酸っぱいものを食べると顔がくしゃっとなるのでしょうか。 一説には、酸味はくさったものを感知する味覚なので、周りにいる仲間に危険を知らせるためだと言われています。
ほかの4つの味覚にも意味があり、甘味はエネルギー源を察知、塩味はミネラルを察知、苦味は毒を察知、うま味はたんぱく質をつくるアミノ酸を察知し、それぞれ生きるために活用されています。

さて、酸っぱいものを想像したときに、口の中に唾液がじんわりと出ませんでしたか?
なぜ酸っぱいものを食べると唾液がたくさん分泌されるのでしょう。また、口に入れた瞬間は酸っぱくなくても、だんだん酸味が強くなった、という経験があるのではないでしょうか。

酸味は他の味覚にはない独特なシステムが明らかにされています。
自然科学研究機構・生理学研究所の研究によると、酸味を感じる舌の上のセンサーである「PKDチャネル」がポイントになります。
酸味以外の味覚は、舌にその味を持つ物質が触れるとすぐに味を感じるものです。しかしPKDチャネルは酸っぱさを受けてもすぐには反応せず、酸っぱい物質がなくなることで強く反応をするのです。
酸味を持つ物質が舌の上になくなる、「オフ」になると、PKDチャネルが「オン」になると言えます。

なぜ酸味は洗い流された後に感じるのかというと、もし危険なものだった場合、早急に吐き出したり唾液で洗い流す反応をしますが、危険なものをしっかりと感知するために、洗い流された後にも酸味を強く感じるようにできていると言います。PKDチャネルの近くには必ず唾液腺があり、酸味はすぐに舌の上からなくなるシステムになっているそうです。
人間の反応にはひとつひとつ生きるための意味があり、五感を豊かに持つ大切さを改めて考えさせられる研究ではないでしょうか。

一方で、酸味は代謝をうながして、疲れをとるなどの働きもあるものです。また料理に使えばほどよい酸味は食欲をそそり、殺菌効果をもちます。私たちは危険を察知しながら、食べものの持つおいしさや機能性も同時によく理解しています。
酸味はいわば「知る味」。原始的な感覚により近い幼い頃は苦手でも、周りの大人が顔をくしゃっとさせながらもおいしいと言っていたり、食べた時の爽快感を経験することでおいしさを知っていきます。危険なものと安全なものを区別したり、おいしさを楽しむことができる味覚を、子どもに身につけさせてあげたいものです。

酢で弁当箱をぬぐったり、梅を入れておくと食中毒予防になります。おいしいお弁当を持って、子どもと一緒にお花見に行ってみてはいかがでしょうか。

使って飲んで、おいしいお酢

調味料であるだけでなく、最近は健康のために飲む人も多いお酢。 大活躍の「お酢」のパワーの源は「酢酸(さくさん)」です。

酢酸の力は科学的にも証明されており、血圧や血中のコレステロールをコントロールしたり、 食後の血糖値の上昇を穏やかにするなどの効果があると言われています。

お酢の種類は原料別にたくさんあり、穀物酢、米酢、りんご酢など、その数は数百種におよぶと言われ、 原料や製造方法の違いが各お酢の味や香りといった特徴になって表れます。 世界各地に、土地の風土や気候にあった農作物を原料とする伝統的なお酢があります。 有名なものでは、フランスのワインビネガー、イタリアのバルサミコ酢、イギリスのモルトビネガーなど。 珍しいものでは、ハチミツを原料とするハニービネガーや、牛乳の乳清(ホエー)を原料としたホエービネガーなどがあります。

お料理や飲み物で、いろいろなお酢の風味の違いを楽しんでみてはいかがでしょうか。

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