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HATTORI食育クラブ 食育通信No.28

対談

人を健康にする「おいしさ」

大田 茂
味の素株式会社 調味料部
戦略推進グループ長
(写真左)

服部 幸應
服部栄養専門学校 校長/医学博士
(写真右)
大田
先日の世界料理サミット2009では、各国のトップシェフ4人のパネルディスカッションのテーマが「うま味」でしたね。
服部
はい。このときには「umami」を、日本語ではひらがなの「うま味」と書くのだと説明しました。誤解されていますが、漢字の「旨い味」ではないですよね。「おいしい」と同義語ではなく、基本的な甘味、酸味、塩味、苦味に並んで基本五味のひとつであることをお伝えしたかったのです。うま味は日本人の味覚をよく表していますが、ヨーロッパには伝わりにくいですね。
大田
砂糖や脂肪で食の満足度を感じる文化ですからね。
服部
日本は1676年ごろから明治維新まで、肉を食べない期間が長かったから、野菜や昆布などのうま味が発達するという、諸外国とは違った食文化が形成されていると思います。
大田
世界中の人々に楽しく興味深くうま味を理解していただくため、うま味についての情報を工夫して発信しています。配っている冊子に興味を持って頂くように工夫したり、その国の文化や食生活に合ったうま味をふくむ食材をピックアップしています。
服部
トマトやアスパラにはうま味成分のグルタミン酸が豊富。肉や魚のうま味はイノシン酸なので、トマトのソースをかけると、昆布とかつおの合わせだしのような相乗効果で料理がおいしくなります。
大田
そうですね。私たちは、料理をおいしく食べることの大切さを、うま味を通してお伝えしたいと考えています。その一環で、うま味成分の機能性をご紹介する活動をしています。
服部
うま味に新しい生理機能が見つかったそうですね。「胃がうま味を感じる」、これはどういうことでしょうか。
大田
舌には味覚を感知する受容体がありますが、味の素の研究所で、グルタミン酸の受容体が胃の中にもあることがわかりました。まず、グルタミン酸は舌の受容体で感知されると、脳に伝わって唾液の分泌をうながします。唾液は食べ物の味成分を溶出させることにより味を感じることができます。そして唾液の水分と粘性で、食べ物を飲み込みやすくしたり、口腔内の衛生状態の維持にも役立って、安心・安全に、そしておいしく食べることができます。そして胃では、グルタミン酸が胃の受容体に感知されると、今度は迷走神経を通じて脳に伝わり、まず消化液の分泌を促します。そして胃から粘液を出して胃粘膜を保護することがわかってきました。
www.bestreplica.me
服部
なるほど。うまい!と思うとどくどくと唾液が出るのは、そういうことかもしれませんね。おいしさは健康につながると。
大田
はい。現在、先進国では過栄養の生活習慣病などが問題で、発展途上国では、飢餓、栄養不良が問題となっています。私たちはアメリカを拠点に、グローバルにうま味研究をすすめ、世界が抱える問題の解決につながるよう努めています。今年で創業100周年になるのですが、これまでの活動の中で培ってきたものを有効に使い、食料資源の問題、健康問題、地球環境保全の運動をすすめて行く理念を掲げています。食と健康、命のために働く健康貢献企業グループでありたいと思います。
服部
素晴らしい。現在はサスティナビリティ、持続可能性社会を目指す時であり、時代にぴったり沿われている。また身近なところでも、味の素さんは社員の方が講師になって小中学校で「だし」や「うま味」について語りかける味覚教室もされていますが、食卓でのコミュニケーションのなかで、子どもは味覚を育て、感謝を学び、人間性が育ちます。
大田
はい。6月には当社の山口社長(現会長)が自分の母校で味覚教室の先生をやっています。味覚教室は今年度130校、9,000人を目標にしていますが、今後さらに拡大していく予定です。そして、今後一層、子どもたちに食に興味を持ってもらい、豊かな食生活を送られるようすすめていく所存です。
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服部
まさしく食育ですね。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

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