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食育通信対談
No.39
今こそ祭りの刻
服部 幸應
服部栄養専門学校 校長/医学博士
(写真右)
祭りの原点をご存知ですか?けして不謹慎なものではありません。
邪気を払い、鬱屈しているものを発散し、人々の絆を高めるものなのです。
この度、東日本大震災にてお亡くなりになられた方々やご遺族には心よりお悔やみ申し上げます。 また、全ての被災者の皆様には心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復旧と復興をお祈り申し上げ、食を担う我々としまして、農林水産業支援などで尽力できたらと思っております。
震災後、多くの国が我々を助けてくれました。フランスやアメリカは救援物資の用意や人材派遣を迅速に行い、さまざまな国から義援金とメッセージが集まりました。フランス大使、アメリカ大使と震災後に話をしましたが、日本への支援の約束と、アドバイスをいただきました。各国に心より感謝を申し上げます。食べ物に関しまして、これからの影響が大きくなるでしょう。
地震、大津波により、47都道府県の中でも食料自給率の高い東北地方で大きな打撃を受けたのです。海洋業は回遊漁業が15%、養殖漁業は24%、練り物や加工食材は35%ダウンしたと言われております。毎年8月15日に前年の自給率の数値がでますが、カロリーベース40%から30%台に落ちてしまうでしょう。
さらに原発事故の影響があります。放射能により大気、土壌、海洋を汚染され、とくに影響の大きい子ども達には気をつけてあげないといけません。世界では漏れただけでも危ないという認識です。チェルノブイリを研究している学者は口をそろえて、自然界にない人工のものを、大丈夫だと一言で片付けてほしくないと言います。今口にしても何もないかもしれませんが、5年後、10年後に表れてくると言われているのです。
www.addwatch.org
放射線量は現在下がっていますが、蓄積量で考えないといけません。外からの放射線量だけではなく、呼吸や食物、水による内部被曝にも気をつけてください。飲食する上で大切なことは、風評被害と実被害を混同しないことです。これから国や個人が放射性物質量など安全性を計っていきます。被害は風向き等で変わりますから、同心円にはなりません。国は的確に計測しながら、汚染されてしまった作物は買い取る、補償をするなどの対応をするべきであり、私たちも安全性を確認されたものを食べて生産者を助け、子どもたちの健康を守るのです。
私はこれまで、安全保障について語ってきました。有事の際、避難所に食糧、水、物資が十分にあるよう備蓄することはもちろん大事です。そしてもし電気、ガス、水道が止まったら、もし食糧がなくなったらどうするかを考え、備えなくてはなりません。現在、「もし」は「もし」でなくなり、実際にさまざまなことが起きる可能性があるということを、皆さん感じられているのではないでしょうか。
食の安全保障として、これまで食料自給率を国として上げるべきだとお伝えしてきました。今回は大きなダメージを受けていますから、支援はいっそう必要でしょう。海外に食は頼れません。世界人口は増え続け、経済力が伸びている国の台頭で日本の商社が買い負けし始めており、輸入はいっそう困難になります。
早急に日本はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)についても対応しなくてはなりません。6月に決定をするという話ですが、不利になるであろう農林水産に関して対応が不透明なままです。TPPに反対をする方もいますが、利益がでる項目もありますから、私たちが生きるために必要な食べ物に対しきちんと補償をした上で進めると良いでしょう。前述した通り、安全保障の面から、日本の食べものは日本で作らなくてはなりません。フランスやアメリカなど、農家への補償等について良い事例がたくさんありますから、日本は見習うべきです。1年ほど前に個別の補償制度ができましたが、恩恵は大手のみで、小さな農家にまで回っていないのが現状です。
食育が動き始めたこの数年で、地産地消が根づき大切にされ始めていました。大変な時ですが、我々のこの心は変わらないでしょう。これから我々は何を食べるべきか、日本はどうしていくべきかを、一人一人が考え、行動しなくてはならないと思います。
今は、本当は祭りの時です。祭りの原点をご存知ですか?邪気を払い、鬱屈しているものを発散し、人々の絆を高めるために催すものであり、けして不謹慎なものではありません。全国の慶事や祭りなどが中止になっていることを残念に思います。また震災後の自粛ムードのために、レストランやホテルに閑古鳥が鳴いています。経済が滞っていては復興は進みません。今こそ祭りをし、被災地の産物を使って日本を盛り上げ、復興への勢いを増しましょう。
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