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食育通信対談
No.34
薬膳は元気定食。おいしく食べて健康に
板倉 啓子
国際薬膳食育学会 理事長
メンター・フーズ株式会社代表取締役
(写真左)
服部 幸應
服部栄養専門学校 校長/医学博士
(写真右)
服部
板倉先生は長年薬膳の普及にご尽力されていますね。
板倉
もう24年目になります。薬膳は難しいイメージがありますが、私は「元気定食」だと考えています。
ふだん食べている食事にも実は薬膳は浸透していて、カレーやお刺身も薬膳だと言うと、皆さん驚かれますね。生魚に食中毒などを予防する解毒・殺菌作用のある青じそや菊の花を添えるのは、まさに薬膳の考え方です。
また、自分の体質や季節のこと、食材には体を温めるもの、冷やすものがあることを知るだけでも違うと思います。
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服部
薬膳などの東洋医学は、体に合うと良く効きますね。
板倉
薬膳はオーダーメイドの食事ですので、個々の体質に合うことが大事ですね。
中医学をもとにした薬膳は、西洋医学の”内臓や皮膚など悪い部分を診て病気を治す“という発想ではなく、体全体のバランス、リズムを、食べ物や薬で整えて、健康を取り戻します。
服部
西洋医学と東洋医学、良いところを合わせていけると良いですね。
板倉
未病や予防に効果的ですから、医療費削減に必要な料理だと考えています。
誰しもがバランスを崩しますが、病気になる前に薬膳で整えられます。薬膳は身近な食材が基本になりますが、栄養価の高い生薬を少しプラスすると、体の環境が一層整いやすくなります。
服部
簡単に言っていただける薬膳の原則はありますか。
板倉
はい。五行説というものがございまして、五臓は五色の食材でバランスをとります。
たとえば腎には黒色の食材が良く、黒ごま、昆布、きのこを。腎はアンチエイジングを司るので、長寿食品とも言われています。
また肺は白色の食材で、咳を止めるには、れんこんや大根、ぎんなんがよいです。
服部
なるほど。五行は道教から来ている考え方で、日本料理にも取り入れられています。
先生は「和漢膳」という言葉をお使いになっていますが、薬膳とはどう違うのでしょうか。
板倉
はい。基礎は同じ中医学ですが、世界一の長寿を誇る日本料理の知恵を取り入れ、日本人の体と味覚に合うようアレンジしました。服部先生もよくおっしゃっていますが、みそやしょうゆなどの発酵食品は素晴らしい健康食品ですので、昔ながらの日本食を食卓に取り入れていただきたいですね。
また、中国では大根やにんじんの横に生薬が置いてあり慣れ親しまれているのですが、和漢膳では美味しさを第一に、生薬は毎日食べてよい量にしています。
服部
そう、中国や韓国などでは漢方薬局もたくさんあり、一般の方がどんな症状には何が効くとよく知っています。
板倉
アジアではクコやなつめのジュースが普通の喫茶店でいただけたり、薬膳の知恵が根づいていますね。
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服部
私の持論なのですが、日本人は太陽や月、天地の運行を踏襲した旧暦を忘れてしまったことで、旬などのイメージがずれていると考えています。日々の生活の中で、ぜひ旧暦や旬を意識していただきたい。
板倉
旬には意味がありますからね。動物と同じく人も冬は体が眠るので、春はわらびや菜の花など苦味のものを食べて覚まします。また、秋は北風が吹くので肺をうるおす白い食材を食べる。
現在日本には、一年中同じ食材が並んでしまっています。家庭科の授業で教えられると良いのですが。
服部
先生は子どもや親御さんへの食育活動もご活発ですね。
板倉
はい。私は妊娠中も薬膳を食べましたが、娘は小学校から高校まで、一度も休まず通いました。
親が子どもにできることは、健康に過ごせる体作りをしてあげることだと思います。
子どもたちがいるご家庭でぜひ和漢膳を作っていただきたいですね。
服部
素晴らしい。私も食育の根幹は家庭の食卓にあると考えています。
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板倉
かつては子どもにだけ料理や食育を教えていたのですが、子どもは一人で買い物に行かないですよね。食に携わる大人への食育も大切だと気がつきました。
服部
先生の開講された通信教育の薬膳マイスター養成講座では、本格的に学んでいただけますね。
私も食育インストラクター養成講座を監修していますが、食育を家庭に根づかせる良い役割を果たせました。
板倉
仕事や家事が忙しい中でも学び続けることは大切ですね。健康であると知恵が生まれ、人はポジティブになれます。人生を豊かに楽しむためにも、少しでも食のパワーを知っていただけると幸いです。
幸福は口福(こうふく)から…ですね。
服部
薬膳のおもしろさをぜひお伝えください。本日はありがとうございました。
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